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□□■ Note >> 忘却のシルバーアロー ■シルバーアローと言えば、言わずと知れたメルセデス・ベンツのレーシングマシン達を表す、いわば称号みたいなもの。 ドイツのナショナルカラー・シルバーに塗られたメルセデス・ベンツは、真紅のフェラーリ同様モータースポーツでの歴史を語る上で幾度も登場する主人公の一つだ。 だが、シルバーアローは一人じゃない。 ドイツのモータースポーツを語る上で欠かせない一台。 ポルシェ? VW? いいえ違います。 その名はアウトウニオン…… そのマシンを作り上げた名匠(マイスター)は若きフェルデナント・ポルシェ博士、時は1939年。 ![]() ■何で今、アウトウニオンなのかというと、アウトウニオンの後の姿であるアウディが、ルマン・クワトロに続くモータースポーツをモチーフにしたコンセプトモデルを発表したのだ。 その名は「アウディ・ローゼマイアー」 このクルマ、最初顔つきを見た瞬間に判った……フロントグリルが、まんまアウトウニオンTypeDなのだ。 昨年の10月にアウトウニオンTypeDのレストアに成功し、ニューヨークでのデモ走行にこぎつけ、オークションに出品(なんと13億円超!!)したりと、動きがあるのは知っていたが…… しかしコンセプトモデルまで制作するとは…… 正直アウディはそれほど好きな自動車メーカーではないが、最近のアウディのメーカーとしての動きや売出しを見る限り、一本取られた気分になってしまうのは自分だけだろうか。 ■アウトウニオンは小学校低学年向けの自動車図鑑に載ってる程、戦前のグランプリカー(今で言うF1みたいな感じだが、当時はスポーツカーの色が強かった)の代名詞といえる一台。 中でもTypeDは1938年にグランプリレギュレーションが3リッター枠に制限され、それに合致するように改良された39年モデル。 エンジンは無論3リッターのバンク角60度のV12。 無闇に高回転を狙わずに、低回転から太いトルクバンドを使ってライバルを圧倒するトルク型の出力特性が特徴だ。 しかしこのマシン、いや、アウトウニオンの拠点がドイツの東側にあったのが、メルセデスベンツに対して運命を分けた、悲劇のマシン(言いすぎ?)としての決定点だったかもしれない。 戦後、ほとんどのアウトウニオンのグランプリカーは旧ソ連によって持ち去られてしまう。 マシンだけでなくファクトリーの設備も軍事目的だろうか、バラバラになって旧ソ連へと持ち運ばれた。 中にはその低回転の特性を利用しトラクターとして使われることもあったとか。 そんな伝説のマシンを、あるコレクターがその失われてしまった伝説を復活させるべく足繁く旧ソ連へ通い、イギリスのガレージでレストアを始める。 アウディ側も協力し、当時の図面を発掘したり数少ない資料を彼に提供する。 しかし、企業が協力しているとは言え、困難で途方も無い作業だったに違いない。 南太平洋の島から太平洋戦争で散ったゼロ戦の残骸をかき集め、イチからそれらを空に飛ばそうというような感覚なのだから…… それとなんら変らない事を示すように、農家の納屋からエンジンだけが発掘されたり、朽ち果てて残骸と化したTypeDのボディを見つけたりということもあったそうだ。 ちなみに(オリジナルに極めて忠実な)レプリカは存在するが、1937年式TypeCとそれの速度記録挑戦車TypeCストリームライナーは現在もオリジナルマシンは現在も見つかっていない。 ■アウトウニオン・アウディの話は、耳を傾けると、どこか小説の世界に出てきそうな、失われた文明の古代兵器を求める冒険が見えてくるような、そんな感覚にとらわれる。
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