□□■ Note >> ジェシカって何者だ?
■ジェシカ・ブライデン、2282年6月13日生まれ、AB型。
昨年、オレンジぷらねっとでプリマに進級した彼女だが、バカンスシーズンを目前に控えた8月、新興店舗のブルーラグーンへと移籍する。
まだ朝晩、肌寒さの残る季節だが、ネオ・アドリア海を望む海岸に面したオープンカフェに、ジェシカは新たな夏服の制服で現れた。
もう気分は新天地ということなのか、冬の冷たい空気はもうポケットの中にしまいこんだと言わんばかりに、ジェシカの瞳はこれからの季節を見ているようだった。
初めて会う緊張をほぐすような、彼女独得のさりげない微笑みと、透き通るような白い肌。
通り名「白銀の妖精」(アークティック・バタフライ)は彼女のその美貌によるところもあるが、彼女はもう一つ特殊な過去を持ち合わせている。
――北極出身のウンディーネ。
彼女の通り名であるArktic=北極も、その彼女の育ちに由来する。
「普段は本島じゃなくて、ムラーノ島で暮らしてるわ……姉がヴェネツィアン・ガラスのマエストロでね、私は彼女のお手伝いで一緒に暮らしてるの」
姉の名はサン・ブライデン、2人はムラーノ島にある工房にて共同生活を営んでいる。
2人がネオ・ヴェネツィアへ越してきたのは今から5年ほど前の事、それもヴェネツィアン・ガラスに惹かれてのことだった。
ジェシカも姉と同じく、ヴェネツィアン・ガラス職人として1年(12ヶ月)足らずの間、修行をしていた過去がその当時の事を物語る。
――まず、どうしてウンディーネを目指そうと思ったのですか?
「同じ工房に住む同僚に勧められたから、って言うのが大きいかな。
その時私はマエストロの元で職人としてガラス作りの事を学んでいる事になっていたけど、肌がスグに被れたりしてたしあんまり自分には向いていなかったから、
工房のみんなの面倒を見るような、食事を作ったり洗濯をしたりをしていたわ。そんな中で同僚の一人が「水先案内人をやってみたらどうだ」ってね、
工房はそんなに楽な経営じゃなかったから、ここでメイドをやっているよりもみんなの力になれればって思ってね」
――ここ、ネオ・ヴェネツィアへはガラスに魅せられてやってきたと。
「そうね、自分は昔いろいろ不幸があって、保健所の施設に収容されてた。そのときたまたま見たのがここのガラス工芸でね、姉と2人でココの工房で働きたい
って懇願したのを覚えてるわ。ネオ・ヴェネツィアにとにかく行きたかったって気持ちだったかな」
――ガラスを見て、ネオ・ヴェネツィアに行きたいと直感で何かを感じたわけですか。
「えぇ、北極の地方はココに比べたらひどくつまらない生活だったわ。色もなくて、ただ風が強いだけの毎日だったし、
それに収容所にいると言う閉塞感からも開放されたかった。もっとも、ガラスに強く魅せられたのは私よりも姉の方だったかな、私は姉の背中を押してあげたかった」
――昨年、早い出世スピードでプリマへ昇格となったわけですが、一人前として仕事をはじめた感想は?
「それは……忙しくなったわね(笑) 最初は通り名で呼ばれること自体になれないところもあったし、一人前になった事で仕事のブッキングや立場上いろいろな場に
足を運ぶ事が多くなったからね。だけど逆にそうして動き回る事で、水先案内人としてのモチベーションを高めている部分はあるかな、逆に不都合な面や今までなんとも無かった
面でトラブルがあったのは確かだけど」
――それは、今回の移籍に関係している事ですか?
「うーん……オレンジぷらねっとの待遇には満足していたし、別段大きな不満があったわけじゃないわ。ただ、全部が決められた事だったから、あまり工房の事を
優先させるわけに行かなかったのが辛かったわ。その意見でフロントと多少衝突する事があったのは事実だけど、それは会社が悪いんじゃない。私が工房を優先させて
仕事をおざなりにしてしまっている部分があったのは事実だから」
――工房の事と言うのは?
「食事の用意や、洗濯といった以前から続けてるような事もそうだけど、これはプリマになった事で工房のほかの人が手伝ってくれたりで、前ほど忙しくなくなってる。
あとは、やっぱり姉の事とか……姉さんは芸術家だし、やっぱり向っている作品にだけ集中できるようにしてあげたいって言うのがあるんですよ」
――貴方の姉であるサン・ブライデンはネオ・ヴェネツィアを代表するガラス職人ですね。
「えぇ、誇らしく思うわ。ココまでいろいろ大変な事も少なくなかったけど、自分は今にとても満足しているし、これからも姉さんを支えていければって思うわ」
――しかし、貴方はまだプリマの水先案内人として駆け出しと言えるのでは?
「……それは、姉に比べて未熟で不釣合いって言いたいのかしら?(笑)そりゃ、確かにまだプリマの中では若手ではあるけれど……」
――そういう意味じゃないよ、貴方のプリマとしての将来、描いている展望が気になったんだ。
「私がプリマになれたのは、ネオ・ヴェネツィアがとても好きな街だったと言うのが一番だったと思うわ。 さっきも話したけど、私たちはこの街に憧れてやってきた、
そしてこの街はいろんな希望を与えてくれた。 だからやっぱりお客さんに案内する時もつい熱が入ってしまうこともあるかな」
――この街の持っている魅力を伝えていきたいと。
「ええ、そうね。でもそれはシングルの時からやっぱり持っていた気持ちだし、プリマになったからって言う特別な意気込みとかは特にあるわけじゃないのよ」
――新しい制服を着てどうですか?
「オールもゴンドラも変わったし、なによりそれまで大規模な店舗だったのが小規模な店舗になったから、いろいろ都合も違うししばらくはいろいろと慣れが必要かなって思ってたわ。
だけど、今はもう大丈夫、ティアラ(=B・セレナイト)はとても親切で思慮深いし、それと見習いの子たちもとても若いから、これからのお店としての可能性をすごく感じるね!」
――ここからはプライベートな質問になるけど……好きな色は?
「青、それもダークブルーっていうのかな、深くて暗い青色かな。別に今のお店の色を選んだって言うわけじゃないわよ(笑)
北極の方の海や風を思い出すというと、やっぱりその色なのかな。いろいろあったけど自分のルーツだからね」
――アクアでも北極は居住地域ではありませんね。
「とても風が強いの。マンホームと違ってすごく寒かったりとか雪原が広がっているわけじゃないけど、やっぱり窓から見るその景色は強烈に覚えてるわ。
あまり良い思い出があるわけでもないけれど、自分のふるさとだから嫌いになれるわけじゃないわ」
――それと、一部の人の間では貴方がコーラが大好きという噂があるけれど、それは本当?
「大好きかって言われれば……前の同僚にも良くコーラ好きなの?って聞かれたかな。確かに良く飲むわね、ココに来て一番最初に飲んだ飲み物がコーラでね、初めて飲む味だったからって言うのもあるのかな」
――コーラ中毒みたいな所はあると?
「いやいや(笑)確かに良く飲むけども、カフェラテやエスプレッソでくつろぐのも好きだし、とりわけ好きってわけじゃないわよ。それにコーラは体にもあまり良くないのよ」
――オフの日はどうすごしていますか?
「姉さんに付き合うことが多いかな、ムラーノ島はそれほど優れた観光のポイントじゃないけれど、たまに姉さんと一緒に散歩する事はあるかな……あとは工房の人たちのお手伝いや、買物なんかもこの日に済ませてしまうことも結構あるかしらね」
――毎日大忙しですね。
「そうね(笑)でもとても今は充実していると思うわ」
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